東京から新東名自動車道を走り約300km。
静岡県西端の都市、浜松市から東へ戻る形で静岡中西部の酒蔵を廻ってくる今回の企画。
脚となるのは英国のランドローバー(今は親会社がインドですが)のニューモデル『レンジローバーイヴォーク』です。
レンタカーですが、珍しくエントリーグレードではありません。
室内の頭上は開放感抜群の大型サンルーフ。
足回りは20インチホイールを履いています。
タイヤは245/45R20。
スポーティーな乗り味ですが、サスペンションが優れものなので乗り心地に違和感はありません。
四輪の接地感もハッキリしていますし、路面状況を適度にダイレクトに伝えてくれます。
エンジンは2.0リッター直列4気筒ターボ。
6速ATとの組み合わせで、1.7トンの車重を感じさせない、とても気持ちよく走ります。
と、いうかあまりに軽快で、ちょっと走りやフィーリングは国産車に乗っている印象っぽいかも。
早朝の撮影を終えて最初の酒蔵を目指します。
来た道を戻り、新東名自動車道・浜松浜北ICを通り過ぎて今いる旧浜北市で『花の舞』を醸す酒蔵、花の舞酒造へ。
天竜浜名湖鉄道宮口駅近く、金剛山庚申寺へと続く門前町の古い町並みが残る石畳の参道沿いで江戸時代後期の元治元年(1864)の創業した花の舞酒造。
店舗は伝統的な商家の佇まいですが、裏手に建つ酒蔵は大きな最新鋭の工場。
生産量の7割は地元消費、残り3割は海外に輸出している県内では中堅の酒蔵です。
酒銘『華の舞』は天竜川水系に古来より伝わる奉納踊りのひとつ「花の舞」に由来しますが、その花とは稲の花のことだそうです。
『花の舞』
華の舞酒造株式会社
住所:静岡県浜松市浜北区宮口632
電話:053-582-2121
創業:元治元年(1864)
URL:http://www.hananomai.co.jp/
次ぎは浜松市中心部の浜松駅前へ。
『出世城』を醸す酒蔵浜松酒造は現在市内に残る唯一の蔵です。
浜松駅の北口から旧東海道の国道へ出て東へ約1.2kmほどの場所に伝統的な佇まいを残しながらも近代的な酒蔵浜松酒造があります。かつては地ビールも造っていました。
蔵元の先祖は代々この地に続く庄屋で、明治4年(1871)に中村五郎七が造り酒屋を創業。屋号は『山五』でした。
大都市の中心部にありながら比較的広い敷地をもつ同社の施設を「天神蔵」と称しています。
しかし、たどり着いた天神蔵の門には閉館のお知らせが。
事務所兼販売所は裏手の方にあるとの案内地図が。
こじんまりとした事務所兼販売所。
まだ早朝で営業時間前でしたが、人はいましたので声を掛けたら中に入れてくれました。
浜松酒造の創業当時からの最も古い酒蔵「明治蔵」は現在、食事処(昼間はカフェ、夜は居酒屋)、直売所、ギャラリーとなっています。
日本酒の仕込みは「昭和蔵」、吟醸系の酒造りは「平成蔵」で行われています。
かつては浜松の地ビール「天神蔵麦酒(てんじんぐらびーる)」を醸造していました。ちなみにその他焼酎『五郎七』なども造っています。
赤レンガ造りの「麦酒工房」はチェコから導入した醸造プラントを使って本格的なビール醸造を行っていましたが、残念ながら2015年3月に醸造を中止。
現在設備の整理が行われています。
お酒を一本買っただけなのに、大きな酒粕を二袋もお土産にいただいてしまいました。
ちなみに酒銘『出世城』は、徳川家康をはじめ、江戸時代の歴代城主の多くが幕府の重役に出世した、この地のシンボル浜松城の別称に由来。
『出世城』
浜松酒造株式会社
住所:静岡県浜松市中区天神町3-57
電話:053-540-2082
創業:明治4年(1871)
URL:http://hamamatsushuzo.com/
さて、浜松市を出て隣の磐田市に向かいます。
磐田市の中心部は磐田市は古代律令時代に遠江国の国府・国分寺が置かれた政治文化の中心地だったそうで「遠江府中」とも呼ばれていました。
江戸時代には東海道五十三次の28番目の宿場である「見付宿」として栄え発展した町です。
JR磐田駅の北口から北西へ。
精密機械や化学工場が建ち並ぶ一画に蔵を構える千寿酒造は明治35年(1902)創業の酒蔵です。
古くからこの地域の庄屋だった山下家が創業し、大正14年に合資会社山下本家となります。昭和に入って現在の社名となりました。
残念ながら蔵はお休みでした。
まあ、この蔵はネット通販にも力を入れているので、あとでそちらで買うことに。
駅前周辺も廻りましたが、町の酒屋さんがまったくありませんね。
あと、酒銘の『千寿白拍子』(せんじゅしらびょうし)は源平争乱の世に、当代一の白拍子(舞姫)と謳われた千寿が地元に残した恋物語に由来するとか。
ちなみに、磐田の中泉地区はその地名にもあるとおり、古くからの名水の地。
千寿酒造の斜向かいに建つ高砂香料工業(株)は国内最大の香料メーカーで世界シェア5位。さらにシャネルの香水の水もこの磐田の水といいます。
さて、磐田市を出て隣の袋井市へ。
袋井市の北郊外。敷地川の土手に隠れた國香酒造をなんとか発見。
ひっそりとたたずむ國香酒造は一見廃業している蔵のように見えましたが、現在人気急上昇中。入手困難な酒蔵の一つです。
年間生産量は約200石。蔵元自ら杜氏を兼任して酒造りを行う少量生産の自醸蔵です。
蔵の創業は不明ですが蔵元の松尾家は安土桃山時代から続く旧家で、酒造りを始めたのは江戸時代末期ごろとも言われ、清水次郎長一家の森の石松が愛飲したとか。
蔵の正面に廻ると蔵に直売所は無く、普通の民家が。
入り口には大きな『國香』の暖簾が。
蔵元の奥さんらしき方が出てきて、市内にある特約店を教えてもらいました。
袋井市役所近くにある「酒ハウス・ヤマヤ」で購入。
酒銘の『國香』(こっこう)は皇室の象徴とも言われる菊の花にちなみ、国を代表する酒になるという思いを込めて明治憲法の発布を記念し「國の香り」と名付けたことに由来します。
『國香』
國香酒造株式会社
住所:静岡県袋井市山田537
電話:0538-48-6405
創業:江戸時代末期
URL:なし
袋井市を出て隣の掛川市へ。
掛川市も平成の大合併で大東町、大須賀町といっしょになって大きくなりました。
掛川市には静岡を代表する銘酒『開運』で有名な土井酒造場がありますが、以前に足を運んでいるので今回はスルーします。
内陸部から太平洋を目指して、遠州砂丘近くにある小さな城下町にして宿場町だった旧大須賀町横須賀へ。
遠州灘に面した遠州大砂丘と呼ばれる海岸線も、宝永4年(1707)の大地震で失われるまでは入江がある港町で、遠江航路の中継地として古くから栄えていましたが、港町が失われてからは陸上交通の中継地、宿場町として生き残り、江戸時代は幕府重鎮が歴代の藩主をつとめた横須賀藩として発展しました。
今も城下町、宿場町を偲ばせる横須賀の町の中に蔵を構える山中酒造の醸すお酒は『葵天下』。
昭和4年(1929)なのですが、実は本家は富士宮市にある富士高砂酒造なのです。
江戸時代後期の文政年間(1818〜30)に滋賀県の蒲生郡日野町の近江商人である山中正吉が現在の富士宮市で酒造りを始め、その後富士周辺に四蔵(高砂、玉世界、松爵、田子浦)を構え、ここ横須賀に一蔵(神苑、天職)構えました。
当時静岡県下2位の生産量を誇ると共に、日本酒以外にも、焼酎、味噌、醤油、酢などを醸造していたといいます。
さらにその後次々と支店や分家が誕生。そうした中で昭和4年に分家独立したのが山中酒造でした。
かつてよりの『神苑』『天職』に加え、昭和60年代の吟醸酒ブームの際、天下をとるとの思いから生まれたのが現在の主力ブランド『葵天下』です。いわずと知れた徳川家康の天下の事。
車を町役場に駐めて町に入りましたが、山中酒造はお休みでした。
お酒は町内にあるスーパーで購入。
『葵天下』
山中酒造合資会社
住所:静岡県掛川市横須賀61
電話:0537-48-2012
創業:昭和4年(1929)
URL:http://www5a.biglobe.ne.jp/~yamanaka/
遠州横須賀の町を出発。
標高265メートルの小笠山山系、静岡の風物詩である茶畑が広がる丘陵地帯を駆け抜け菊川市の中心部を目指します。
今回初めての山間部の走行です。
静岡県の遠州東部エリアは古くからの茶の一大産地。
そして菊川市内に到着。
JR東海道本線菊川駅前に森本酒造は蔵を構えます。森本酒造は初め明治20年頃(1887)に神尾村(現在の菊川市神尾地区)で創業し、大正13年(1923)に良質な水を求めて現在の市内駅近くに移転しました。
しかし、JR菊川駅前の区画整理により蔵の移転を余儀なくされ、平成18年に元あった場所から今の場所に新築移転したのです。
現在はこの菊川市に唯一残る酒蔵で、蔵元が杜氏を兼任して1人で酒造りを行う酒蔵です。
酒銘の『小夜衣』(さよごろも) は新古今和歌集や源氏物語に登場する「小夜衣」に由来し、「小夜衣」は綿を入れた着物の形をした布団(寝具)である「夜着」の事とか。
『小夜衣』
森本酒造合資会社
住所:静岡県菊川市堀之内1477
電話:0537-35-2067
創業:明治20年(1887)
URL:http://sayogoromo.jimdo.com/
さて、ここから次ぎの目的地である藤枝市までは少し距離があるので、ちょっと高速道路を使います。
ちょうど蔵からすぐの場所に東名自動車道・菊川ICがありました。
イヴォークのエンジンは2リッターですが、ターボチャージャーを装着して、240ps/5500rpmの最高出力と、340Nm/1500rpmの最大トルクを発生、1.7トンという車重を意識させることなく軽快に走ります。
わずか2区間ですが、こうして間に高速走行を入れるのも良い気分転換になります。
【後編】へつづく。
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