一路一会のぶらり、一筆

猛暑の東京でも、朝は少しひんやりしていますが、ここ山口県は朝から蒸す。
徳地の友景旅館を朝６時に出発。

いや〜良い旅館でしたのでもう少しゆっくりとして、宿のご主人にもいろいろとお話をお聞きしたかったのですが、今回は久々の強行軍。本土最西端の山口県は遠くて、そう何度も訪れられる場所ではないので、かなり詰め込んだスケジュールです。



かつて「宿場町」や「市場町」だった山間部の小さな集落を廻ります。
市場町というのは、かつてスーパーや物流があまりなかった時代。他の地域産の食べ物や生活雑貨、衣服等を買うにはどうしていたか。地域の中心的場所、交通の要衝などに小売業者が集まって定期市を開いていました。中世から戦国期くらいの時期では、まだ店舗を持たない出稼ぎ業者が集まる、最近流行の「朝市」のようなスタイル。

そういった場所には地名に「市」（この場合”いち”と読む」が含まれます。
今回の山口県では”福井市”とか”嘉万市”とか。

さらに古い地名や小字などに古市、新市、今市などの名が残る場所もあります。
これは市場の発展と共に、町が拡大していったり、水害や戦争などで市場の場所、町が移転していった場合など。



この市場は毎日開かれる訳ではなく、地方では年１回か２回（お盆と年末など）ほどしかなく、それでもその２日間は活況を呈します。近世になると、あるていど需要がある地域では、月に３回から６回開かれる町も多くなってきました。

これを「三斎市」「六斎市」といいます。三斎市は例えば７の付く日に開かれまして、７日、１７日、２７日が市場の日。

そして地名が「七日市」と。「五日市」「六日市」「八日市」とかも同じでそれぞれ市場の開催日を意味しています。
ちなみに広島県廿日市は毎月20日に市が開かれていたのが地名の由来。



で、山間部のそんな地名が残る町や集落を徹底的に廻るわけです。

が、市場が開かれていたのなんて400年以上昔の話しなわけです。近世（江戸時代〜明治初期）まで栄えていたとしても100年から200年以上前。さらに、戦後の高度成長時代やモータリゼーションの発展で、多くの町が消えていってしまいました。

なので、猛暑の中走りまわってヘトヘトになりながらも空振りばかりでした。
（まあ、エアコンの効いた車での移動ですが...）



都会に住んでいると「お盆」や「年末年始」は大型連休の意味合いが強いですが、地方ではこの期間はお休みの店が多い。なので食事はおのずとコンビニやロードサイドのチェーン店となってしまいます。

もっとも、ロードサイドのチェーン店があるような場所はめったに走らないので、山間部にもあるコンビニの存在は大きいです。まさに現在の「茶屋」ですね。支払いも電子マネーなので小銭を持ち歩く必要もなく重宝。

でも、たまには”温かいフツ〜の食事”も食べたいものです。
そんな中、内陸部の小さな町（旧・豊田町）で通りかかった際に見つけたラーメン店。



ラーメンストア（食べログ）
店に入る前にちょっと一瞬考えてしまう感じなローカルなロードサイドにあるラーメン屋でしたが、これが大正解。創業38年とか。女将さんが切り盛りされている家庭的なラーメン店です。お店の名物らしい「野菜チャーシュー麺」を注文。その後替え玉も。美味しかったです。



内陸部を縦横無尽に走りまわったあと、下関市から海岸線に出ます。
そして北浦街道を北上。

かつての宿場町は旧道沿いに残りますが、往時の面影は無し。収穫がほとんど無いまま長門市へ。



現在の長門市中心部は、北浦街道の宿場町「深川宿」がそのルーツ。往時を偲ばせる町並みはほとんど残されていませんが、酒蔵はありました。「青海島」を醸す小崎酒造。



昨年の震災で全国的に大ブレイクした？詩人金子みすゞ一色に染まっている仙崎の町は、この地域ではもっとも伝統的な古い町並みが残る場所です。

しかし、にわか鉄ちゃんの血が向かうのは、山陰本線の支線「仙崎駅」です。





２万枚のカマボコ板で「金子みすゞ」の世界を表現。圧倒されます。夜はちょっと怖いかも。



あとはひたすら北浦街道の宿場町（らしき場所）を巡って毛利氏の城下町・萩へ到着。





市内にある酒蔵で地酒を購入。今回の旅では酒蔵巡りはほとんど無く、購入した地酒も７本ほど。



そして今宵の宿は、萩市に残る元遊郭で文化財の宿「旅館 芳和荘」です。



ほぼ大正時代のまま。映画のセットみたいでしょ。



廊下も部屋の畳も部分的に沈むところあり。でもいいんです。



素晴らしい。あっという間の２日間でした。

いや〜疲れた。

そして暑い〜。

年内に山口県だけは廻っておきたかったので、今回は少し無理をして、しかもこのクソ暑い時期に来てしまいましたが、本来であれば北、せめてもう少し標高の高い場所へ避暑したかったです。

そういう理由もあって、盆地の京都・奈良も今回は行きませんでした。


ああ、涼しいところに行きたい。

標高の高いところへ...。


＜おしまい＞


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